業務改善を実現させるための「考え方」と「事例」

労働人口の減少や働き方改革の推進など、社会環境が目まぐるしく変化しているなか、企業は業務の改善によって、競争力を維持・向上させなくてはいけません。ここでは、業務改善のポイント、具体的な改善策などを交えながら、業務効率・生産性を向上させるための施策をご紹介します。

なぜ業務改善が必要なのか?

そもそも、なぜ「業務改善」をしなければならないのでしょうか。まずは、企業に求められている業務改善の必要性について解説します。

人手不足はどんどん深刻化していく

日本の人口は、現在減少傾向にあることはご存じの方も多いと思います。その原因とも言えるのが少子化ですから、特に若年層の人口がどんどん減っているのです。そのため、働き手である若い労働力を確保するのは年々難しくなっていくでしょう。企業で働いている人材も、いずれは定年を迎えますし、何らかの理由で突然退職してしまう可能性も捨てきれません。安定して事業を続けていくのはもちろん、事業を拡大していくためにも、人材の確保以外の方法でも人手不足を解消する必要があります。そのための手段が「業務改善」というわけです。

コスト削減で業務効率や生産性の向上を図る

変化する社会・経済環境のなかで、ほとんどの企業は常にコスト削減に取り組んでいます。特に近年では、インターネットの普及や技術の進歩により、企業にとって有意義なサービスやシステム、ツールなどがどんどん登場しています。実際、大幅にコスト削減が図れた例も数多くあります。コスト削減に取り組まないままでいると、ライバル企業がより高品質で低価格のサービスや製品を出し、あっという間にシェアを奪われる可能性もあるでしょう。企業間競争を生き抜くためにも、コスト削減を図り、業務効率や生産性の向上につなげなければなりません。

働き方改革で労働環境改善が必要

苦労して雇った人材が、すぐに辞めてしまうということはないでしょうか。企業にとって、人材の定着率は重要です。求人広告を出すにもコストがかかりますし、一人前になるまでは教育しなければなりません。お金と時間をかけて育てた人材が辞めてしまえば、採算がとれないはずです。場合によってはブラック企業の烙印(らくいん)を押され、ますます人材の確保が厳しくなる可能性もあります。そうならないためにも、働きやすい労働環境を整備し、定着率の向上を図ることが大切です。特に近年では長時間労働が問題視されていますから、業務改善により残業を減らすことができれば、職場環境の改善にもつながるでしょう。

ワーク・ライフ・バランス向上でより働きやすく

ワーク・ライフ・バランスとは、「仕事と生活の調和」のことです。近年、このワーク・ライフ・バランスの大切さが叫ばれています。背景には、長時間労働の問題や休みの取りにくさなどがあります。特に若年層は、結婚や子育てといったライフステージが変わりやすいということもあり、そういった変化にも柔軟に対応できる企業が好まれているのです。業務改善を進めていくことは、ワーク・ライフ・バランスの向上にもつながります。

業務改善を行ううえでのポイント

次は、業務改善を行ううえでのポイントについて解説します。ここで重要となるキーワードは、「ムリ」「ムダ」「ムラ」の3つです。これらを可視化することが、業務改善におけるベースとなるのです。それでは、それぞれどのような意味なのかを解説しましょう。

  • 「ムリ」とは?

    「ムリ」とは、「スキル的に対応できない業務を無理矢理任せること」や「特定の人材への業務の集中」など、業務におけるあらゆる無理を指します。例えば、どのような仕事を振ってもそつなくこなしてくれる有能な社員がいたとしましょう。頼りにされる人材がいるのは好ましいことではありますが、「この人に任せればなんとかしてくれる」という風潮は危険です。なんでもかんでもその人材に仕事を背負わせてしまい、本人は間に合わせるために休みなく働きます。無理をさせ過ぎると心身に支障をきたし、退職せざるを得なくなるかもしれません。場合によっては過労死につながります。このような「ムリ」をなくすことが、業務改善をするうえで大切なのです。

  • 「ムダ」とは?

    作業時間を短縮できれば業務スピードがアップし、コストを削減できればお金を有効活用できます。専門知識を持った貴重な人材は、雑務に追われるよりコア業務に集中してもらうべきです。「ムダ」とは、「時間」の無駄、「お金」の無駄、「人材」の無駄など、業務におけるあらゆる無駄を指します。業務改善においては、このような無駄を省くことも大きな目的です。

  • 「ムラ」とは?

    「ムラ」とは、業務における「平準化されていないこと」です。「ムリ」と「ムダ」が混在している状況を指します。例えば、特定の従業員に仕事が集中するという「ムリ」が起きている一方、別の従業員は暇そうにしているという「ムダ」があるとしましょう。従業員の間での仕事量のバランスを整え、平準化を図れば、「ムリ」も「ムダ」も同時に解消することができます。このように、「ムラ」をなくすことも業務改善における重要なポイントとなるのです。

業務改善に効果的な4つの改善策

最後に、具体的な業務改善策をご紹介します。これらを参考にしながら、自社の業務改善をイメージしてみてください。

【その1】作業の「見える化」で業務改善

業務のムリ・ムダ・ムラを発見するには、業務の「見える化」が大切です。例えば、「業務フロー図」を作成すれば、業務がどのような流れで進んでいるのかが把握できます。また、「従業員のスキルマップ」を作れば、個人がどのようなスキルを持ち、何ができるのかが分かりやすくなります。どのような業務があり、誰が担当しているのかを整理すれば、必然的にムリ・ムダ・ムラが見えてくるはずです。

【その2】ペーパーレス化で業務改善

ペーパーレス化は、ムダをなくすためにとても有効な手段です。ペーパーレス化により、無駄な手作業を減らすことができれば、業務スピードが向上し、コスト削減につながります。必要な書類を探す時間も大幅に短縮できますし、保管に使っていたスペースを活用することも可能です。デジタル化した文書をクラウド環境にアップすることで、いつでもどこからでもデータにアクセスできるようになり、外出先や自宅など、場所を選ばない働き方も可能になります。まだペーパーレス化に着手していない企業は、ぜひ検討してみてください。

【その3】作業の自動化で業務改善

単純な作業は、ロボットやシステムで自動化する方法もあります。例えば、近年注目されている「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」という技術があります。これは、ルールエンジンやAI(人工知能)を活用したツールで、購買や経理などのバックオフィス業務のように、ある程度流れが決まっている作業を自動化することが可能です。まだまだ人が手作業で行っているところも多いホワイトカラー業務を自動化することにより、大幅な改善が見込まれます。

【その4】外注化で業務改善

すべての業務を自社で賄う必要はありません。外注を利用するのも、業務改善を図るうえで効果的です。そこでおすすめなのが「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」という方法です。これは、バックオフィス業務、カスタマーサービス業務、配送業務など、業務の一部を専門業者に委託するアウトソーシング手法です。自社の規模や都合に合わせて、上手に利用してみてください。

段階的に業務改善に着手する

限られた人員で実績を出すためには、業務改善による生産性向上を図る必要があります。しかし労働時間の増加や、特定の従業員への負荷増大などは、個人の健康やモチベーション低下につながってしまいます。まずは自社の業務を「見える化」し、チーム単位で導入できるITツールの活用などで、より働きやすく効率的な職場環境の構築を目指しましょう。

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