テレワークを実践するためにペーパーレス化を推進すべき理由

2020年は初頭からCOVID-19と名付けられた新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、社員の感染リスクを下げるために在宅勤務を奨励した企業は少なくありません。そのような状況下にあって、自社の「テレワーク」への取り組みを本格的にせねばならないことを痛感した人もいるのではないでしょうか。

テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活かし、オフィスに通勤することなく時間や場所に左右されずに働くことを指します。時間や場所の制約によって働きにくい環境にいた人も労働に参加できるようになることから、近年、"柔軟な働き方"の1つとして、注目されてきています。

社員の多様な働き方のためにも、また、いざという時に在宅で勤務してもらうためにも、企業にとってテレワーク導入の重要性はますます高まっていると言えるでしょう。

そして、テレワークを実施するために欠かせない施策が「ペーパーレス化」なのです。

テレワークが注目される理由

以下に、テレワークが注目される理由を3つ挙げて解説します。

通勤のデメリット見直し

従来までの勤務形態とテレワークの最大の違いは、通勤の有無です。

公共交通機関の混雑やそれによるストレスなど、通勤には体力的・精神的負担がともなうことが一般的です。

テレワークの仕組みを整備すると、出社日を減らす、あるいはなくすこともでき、社員の通勤時の負担を軽減して業務により取り組みやすい環境を整えられます。

また、通勤や出社を減らすことで交通費やオフィスの設備費を減らすことも可能であり、コスト削減にもなります。

多様な働き方の推進

オフィス出社が不可欠な場合、子育てや介護に時間を割く必要が生じた社員は、"子どもの体調悪化"や"親の体調急変"などの予測不可能な事態が起きた際に、何度も上司や同僚に迷惑を掛けることを恐れて、退職を選ぶことも多いのが現状です。

しかし、雇用形態にテレワークが含まれていれば、急遽自宅にいなければならない状況になっても、自宅で業務を遂行できるため、離職を選択しなくてもすむようになります。

つまり、テレワークを導入すれば、家族の世話などで時間が取られるようになった社員や、配偶者の転勤で通勤が難しくなった社員などにも柔軟に働いてもらえるので、育成した優秀な人材を逃すことはなく、企業側にとっても大きなプラスとなるのです。

採用の強化

テレワークを導入すれば、都市部以外の地域に住んでいる人や海外在住者、車椅子利用者など、勤務先への通勤が困難な人材を採用することが可能になります。

求職者にとってもテレワークの制度が整っていることは、長く働き続けるための大きな魅力となります。

ペーパーレス化推進はテレワークの大前提

テレワークの実現のためには、どこにおいてでも業務遂行が可能であるように、環境を整える必要があります。

そのためには、まず「ペーパーレス化」の導入です。

提案資料や会議資料、納品書などが紙媒体の場合には、「紙」のやり取りが前提となるため、働く場所の制限が生じるからです。

紙媒体中心のワークフローでは、申請や稟議のためにオフィスに出向く必要があります。単にテレワークを実施したとしても、テレワークの社員は紙資料を閲覧できないなどの情報格差が生じてしまうでしょう。

以下に、ペーパーレス化を推進するための施策をいくつかご紹介しましょう。

現存する紙資料を電子化するための施策

ペーパレス化を推進するためには、まず、オフィスや書庫にある紙資料の電子化を行う必要があります。

  • 電子化する資料と紙保存するものとにわける

    書類の電子化の前には、どの書類を紙書類として保管し、どの書類を電子化する必要があるのか、明確に仕分ける必要があります。社員に担当エリアを割り振り、ホッチキスで留められている書類は外す作業を行い、ファイルにまとめられた書類はそれを解体するなどの作業を行ってもらいます。必要のなくなった紙資料はシュレッダーを使用するなどして、適切に廃棄しましょう。

  • スキャナーを使って電子化

    次に、スキャナーを利用して紙書類を電子化していきます。

    現在は、バッテリー搭載でも軽量、コンパクトであり、持ち運びが便利で手軽に使えるスキャナーScanSnapや、大量の紙資料であってもスピーディーな電子化が可能な業務用イメージスキャナーfi-シリーズがありますので、状況に合わせて活用するとよいでしょう。

    スキャナーを用いての電子化は、全作業を自社で行うことが可能なため、コストを最小限に抑えられるのが利点です。その一方で、電子化作業にあたる社員の業務が中断するため、人手が十分ではない企業の場合は実行が難しいかもしれません。

  • 書類電子化を外注する

    電子化する紙資料が膨大な量である場合や、資料のデジタル化に人員を割くことが難しい場合は、資料の電子化を外注することを検討しましょう。

    専門業者に書類の電子化を依頼すると、サイズを問わずに書類を電子化することが可能であり、文書名も検索性を重視したものに仕上げてくれます。

    書類電子化を外注する際には、セキュリティの観点から外部に書類を持ち出せない場合も考え、仕分け作業も含めて現場で行ってくれる出張スキャニングサービスの利用も検討してみましょう。

電子化した書類へのアクセスを整える施策

紙書類の電子化にあたっては、以下の点についても考慮しておく必要があります。

  • データの保管場所を整備

    電子化した書類は、資料へのアクセスと共有が容易であるようにしなければなりません。サーバーやクラウド上における保管・管理システムを整えましょう。

    特に、書類のファイリングの重要性は、電子化した書類であっても変わりません。電子書類は種類や時間軸などで区分しておくと便利ですが、さらなる利便性向上のためには、ファイル名を自動で付与してくれたり、自動で仕分けてくれたりする電子ファイリングソフトがオススメです。

    電子ファイリングについては「紙ファイリングよりも業務の効率化が図れる電子ファイリングの鍵」もご参照ください。

  • アクセス権の設定

    アクセスの容易さと同時に機密情報をしっかり守ることが必要です。電子化した書類のアクセス権の設定を行いましょう。アクセス権の付与・管理に関するルールを定め、メンバーのみがアクセスできるようにアクセス制限をかけるようにしてください。必要があれば、フォルダーごと、書類ごとにアクセス権を設定することもできるので、円滑な業務進行を促しながら、セキュリティを確保することが可能です。

    また、担当者が異動・退職した際には、アクセス権を変更するだけで、不必要に情報をさらすことを避けることができます。

    セキュリティ対策としてはそのほかに、通信暗号化、アクセスポイントのパスワードの設定なども大切です。外部からのハッキングに備え、セキュリティソフトを常に最新版に更新することも忘れないようにしましょう。

紙の書類を発生させないための施策

現存する紙書類を電子化していくだけではなく、ペーパーレス化のためには、将来的に紙の書類を発生させないための施策を打ち出すことも大切です。

  • ボーン・デジタル

    はじめから電子書類を作成する(ボーン・デジタル)仕組みを導入していきましょう。社内申請書や請求書、稟議書などについては電子書類で作成できるようにするだけではなく、承認や決裁までのワークフローも整えましょう。

  • 文書管理ルールを定める

    文書管理が個人の裁量に任せられている場合は、電子書類を保管するファイルやサーバーのどこに書類があるのかが、本人でもわからなくなることがあります。電子書類の在り処が不明になりがちということになると、重要な書類は、社員一人ひとりが紙の書類の形でも保存することになってしまいます。

    電子書類の保管場所を整える際に、管理方法を具体的に記述した文書管理ルールを制定し、社員に守らせることで、電子データで保存している資料を個人の裁量で紙資料としても重複保存してしまうことを避けられます。

ペーパーレス化を進めてテレワークの実現を!

テレワークは場所に左右されない働き方ですが、ワークフローや会議書類などが紙書類で行われる場合は「紙」のやり取りを必要とするので、会議や申請のためにオフィスへ出向く必要があります。

この問題を解決するためには、テレワークで働く社員全員が等しくワークフローや書類閲覧ができるようにすることが欠かせず、テレワークを導入するならば、その前提としてペーパーレス化は避けて通れません。

書類の電子化だけがペーパーレス化ではなく、紙書類を発生させないための文書管理ルールの制定、ワークフローの電子化などを行うことで、真に効果的なペーパーレス化が達成できます。

まずはしっかりと業務のペーパーレス化を行い、企業の将来的な成長のカギを握ると考えられるだけではなく、有事の際にも社員を守ることができるテレワーク導入を推進していきましょう。

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