新型コロナウィルス感染防止策の1つとして、テレワークを推進する企業が出てきています。
テレワークを進める前提として、文書の電子化や、テレワークでもわかりやすいファイル共有のルール作りなどに対応しておく必要がありますが、電子化された文書の管理方法によっては、文書の検索に時間がかかる、ファイルのバージョン管理がうまくいかない、文書を紛失してしまったなどの問題が生じてしまうようです。
異なる場所からメンバーがファイルを簡単に見つけられ、業務が支障なく進められるようにするためにはどのような管理が必要なのでしょうか。
業務効率の維持、向上にはルール作りもカギと考えられますので、今回は文書のファイル共有やアクセス権限の設定にあたってのルールの作り方をご紹介します。
ファイルの電子化、御社のテレワークで機能していますか?
ファイル共有のためのルールがないということになると、どのような問題が発生するでしょうか。
例えば、ファイル/フォルダの命名ルールが定まっていれば、検索をする際のキーワードは容易に推測がつきます。しかし、ルールが決まっていないとファイルネームがわからず、検索によって文書が探し出せず、結果的に文書の紛失にもつながってしまいます。
また、バージョンの管理も面倒なところです。改訂履歴機能があるソフトウェアでも、操作ミスで改訂履歴が失われる・ファイルネームに規則性がないなどの状況では、最新のバージョンがどの文書なのか不明になる・複数あるバージョンの改訂順序がわからなくなるといった問題が生じてしまいます。
もう一つは、ルールそのものの問題です。ルールがわかりにくい・ルールが現実の業務にマッチしていない、などの理由からしかるべき人にアクセス権限がない、あるいは過剰にアクセス権をつけてしまった、といったようなことが起こってしまうこともあるようです。
さらにアクセス権限の設定も、問題が出やすい場面です。一つは、アクセス権限管理の負荷の問題です。アクセス権限設定ルールを実行すると、権限設定の作業だけに追われる管理者が出てしまうようなことがあります。
管理者は誰か、管理作業が過大でないか、そしてルールがそもそも明確で実行可能なものになっているか、それぞれ注意しなければなりません。
課題を解決するためのポイント
前述のような課題を解決するためには、文書の電子化・ファイル共有にあたり、適切な手法をルール化することが重要です。
文書の紛失・検索時間の短縮に対応するポイント
文書の電子化を行うメリットには検索性の向上が含まれますが、先にも述べたように適切な管理を行わなければ文書の紛失が起こるのは紙文書と同様です。
文書紛失のリスクを避けるためには、ファイルネームのルール化がおすすめです。
ファイルの管理部署名・日付・「文書体系表」「担当業務権限管掌表」(注)などに定められている通りの文書または業務名というように、最低限3要素を入れると検索キーが3つ確保できます。
こうして文書の検索がしやすくなるのです。
(注)会社にある各部の所管文書や業務の管掌を一覧にした表
ファイル命名ルールの例
文書整理の基本は、フォルダで行う管理です。
例えば、2020年4月1日に作成した文書で、経理部における部内文書体系に従った「請求書プロジェクト」に分類される請求書控えがあるとします。
「請求書プロジェクト」の文書は、「請求書フォルダ」に入れることとして、その中に置く文書のファイルネームとしては、次のようなものが考えられます。
「FIN_請求書(社名)_20200401」
このようなファイルネームならば、大分類は経理部フォルダの中、小分類は請求書フォルダの中、さらに下位には、月ごとの請求書の控えが入っている、というように階層とファイルネームの組み合わせで、どういう文書なのか、部内では一目でわかるようになります。
今、見てきたように、フォルダの階層に合わせた命名ルールを設定すると、フォルダの階層と名前が一致し、視覚的にも一目で位置がわかりやすくなり、検索をする手間が省けます。
文書のバージョン管理に対応するポイント
文書のバージョン管理のルールが明確でないと、最新バージョン・古いバージョン、その順序等がわからなくなってしまいます。
そこで、文書のバージョン管理の方法に一定のルールを定めることが必要です。
先ほどの例を用いるならば、「FIN_請求書(社名)_20200401_01」のように、さらに作成日と、バージョン名を最後につけることは電子化された文書の管理手法として有効です。
さらに、デスクトップにはファイルを置かないルールをつくって遵守し、作業の最後にはネットワークドライブに置き、バージョンの重複がないことを都度確認することによってバージョンの重複は防ぐことができます。
アクセス権の設定に対応するポイント
文書のアクセス権設定についても、ルール設定が必要です。ただし、アクセス権設定では「ルールが難しい」「混乱する」といったことが起こりがちなようです。
アクセス権の設定ルールにおいて以下の2点が明確化されていない場合に、特に上記の問題が生じる傾向にあるようです。
- どんな文書にどこまでのアクセス権をつけるべきか
- 誰が管理者権限を持って、アクセス権を付与できるか
1に関しては、文書がひとつできるたびにアクセス権をつけていく場合、付与すべきアクセス権を常に正しく判断できるとは限らないため、正しいアクセス権が設定されていない文書が発生しがちになるようです。
これに対して、文書をおくフォルダごとにアクセス権が決まるというルールにしておくと、文書の置き場所によりアクセス権が一律に設定でき、混乱は生じにくいでしょう。
2に関しては、管理職がアクセス権を設定するようなルールにしてしまいがちですが、それでは管理職が設定に追われてパンクしてしまいますし、管理から漏れた文書は正しいアクセス権が付けられない恐れがあります。
文書は作成時にアクセス権を決めることが必要ですから、作成者にアクセス権の設定をさせるなど、管理権限を持たせるようにすると、大量の文書にもれなくアクセス権を設定できるようになります。
そこで、ルールには以下の2点を盛り込んだものにするとよいでしょう。
- 文書ファイルの作成者が誰に対してアクセス権をつかなければいけないか、フォルダ単位のアクセス権についてのルールに明確に記載する。
- 文書ファイルの作成者にアクセス権を設定させるときには、必ず管理職をアクセス権者に含めるようにルールに記載する。
また、ファイルのアクセス権設定の操作のマニュアルが、すぐに確認できるようになっていることも押さえておくべきポイントです。
アクセス権の管理と、ファイルネームルールを連携させると効果的
アクセス権の管理については、フォルダのアクセス権を、部内の担当業務と一致させることを基本とするやり方が多くの会社でとられています。
先ほどの「FIN_請求書(社名)_20200401」に分類される請求書控えを例にとると、ファイルネーム通り、経理部の中で、請求書プロジェクトにかかわっている人員にアクセス権をつける、というルールを設定しておくと、管理者が迷うことはないでしょう。また、過去の文書のアクセス権限の見直しなど、必要な場合はIT部門に、ネットワークドライブ上にあるフォルダ単位でアクセス権を一括設定してもらうなどの方法も取ることができます。
運用においては必要に応じて、アクセス権を足したり引いたりすることをおすすめします。
文書管理システムを導入している場合
文書管理システムを導入している場合も、ネットワークドライブの場合と同様、前述したフォルダでの管理ルールを使うことが基本形といってよいでしょう。
システムが利用するデータベースによっては、メタデータやタグによる管理になることが考えられます。
しかし、その場合でも命名ルールを階層ごとに設定する方法を使うことは効果的です。例えば、検索時に同じ階層に入る文書を一覧で閲覧できる、最新バージョンは「最新」タグを必ずつけておくことで分別できるようになるなど、検索を効率化できるメリットがありますので、ルールでお悩みの場合にはおすすめできる方法です。
文書管理システムの中には、命名ルールに従ったファイルネームをファイルに付与する・改訂履歴を自動記録してくれるといった機能を持つものがあります。こうしたシステムを使うと、テレワークにも対応しやすくなります。
問題をルールで解決するとこんなメリットが
ファイルネーム・バージョン管理・アクセス権管理ルールの設定により、ファイル共有のルールを明確にすると次のような効果が生じます
- 検索するスピードが上がり、文書が紛失する可能性が大幅に低減されます。
- 文書のバージョン管理がしやすくなります。
- アクセス権の設定も、誰がどの文書を見る権限があり、管理者が誰か、明確になります。
- どこから文書にアクセスしても、問題なく業務ができるようになります。
- 非常時でも効率を落とさず業務をすすめることができるので、BCP対策になります。
文書に対するルールの設定または実行をシステムにより自動で行うことができると、業務効率がさらに向上するでしょう。
テレワークの成功には共有ファイルのルールがカギ
新型コロナウィルスの流行をきっかけとしてテレワークが広がりを見せ、ファイル電子化の問題点も浮き彫りになってきています。
テレワーク促進の動きは、災害時や、働き方の多様化にもテレワークが有用であることを考えると、縮小に向かうとは考えにくいでしょう。テレワークの問題点は、基本的にはルールが洗練されていないことを原因とするといえるため、ルールを自動で実行してくれる文書管理システムの導入を進めると、電子化の本来の目標であった業務の効率化が、テレワークでも実現できると考えられます。文書管理システムやドキュメント管理プラットフォームなどのシステム導入を検討してみてはいかがでしょうか。