地域とつながり、ICTでニューノーマルを生きる
~「e-messe kanazawa 2020」参加レポート~

今年で35回目の開催となる「いしかわ情報システムフェア」(通称、e-messe kanazawa)。
例年5万人もの来場者を迎え、まさに日本海側最大のICT展示会だが、今年はコロナ禍の情勢を反映して、場所も日程も、そして実施形態も変更しての開催となった。
今回は「e-messe kanazawa」におけるPFUの展示内容と出展の狙いについて、参加レポートの形で紹介する。

※記事中に記載のある『ワンタッチスキャンサービス』は、現在は終了しています。

展示会場から見える、青い空、碧い海

金沢駅から車で15分。広大な敷地の中に、白を基調とした気品ある建物が突如現れる。ここ、「金沢港クルーズターミナル」が今年の会場である。

空と海に囲まれた金沢港クルーズターミナル

近年のクルーズ需要の高まりを受け、今年6月にオープンしたこの施設は、4,000人の乗船客の税関手続きと出入国管理をわずか2時間で行うことができるスペースと処理能力を有しているという。
開放的な空間を生かし、クルーズ船の寄港がない時はイベントなどにも活用されており、金沢港について学べる体験ルームや日本海を一望できる展望デッキも備えている。見上げれば、透き通った青い空、そして目の前に広がる碧い海、ここは金沢の新たなランドマークであり、誰もが気軽に立ち寄れる観光スポットでもあるのだ。

目の前に広がる日本海

進化を遂げたe-messe kanazawa

e-messe kanazawaは、ICT/IoTを活用したビジネス提案や新製品展示を通して地域の情報化推進に寄与することを目的として毎年開催されている。しかし、今年は新型コロナの影響もあり、少し手法を変えて開催することになった。
具体的には、従来のフィジカル展示に加えて、インターネット上の仮想展示スペースである「バーチャル展示会」を同時開催した点や、密閉空間を避けてフィジカル展示の会場を変更した点である。新たな会場として選定されたのが「金沢港クルーズターミナル」というわけである。
今年のテーマは「未来のテクノロジー、ICTがつくる私たちの夢」。
このテーマの下、PFUは地元企業として北陸を盛り上げるべく、ハイブリッド形式(フィジカル&バーチャル)での展示を通して、多くの魅力的なビジネスソリューションを来場者に紹介した。

今年のe-messe kanazawaの会場入口

エッジテクノロジーで現場の課題を解決する

今年のPFUブースの特徴を一言でいうと、エッジソリューションパートナーとして、「ニューノーマルな働き方をICTで支援するためのソリューション提案」といえる。コロナ禍の状況を踏まえ、お客様の現場の課題、そして、社会的な課題に踏み込んで解決を狙うプロダクトやサービスが多く展示された。
早速、展示内容を見てみよう。

明るい雰囲気のPFUブース

本人確認を簡単にすばやく、安全に

PFUブースで最も注目を浴びていたのが、本人確認をスムーズに行うインテリジェント端末「Caora」である。
本人であることを確認するシーンは多様だ。病院やホテルの受付、銀行の窓口、受験会場の受付など。これらの場所では身分を証明するものを対面で受け取って処理することが一般的である。しかし、今のご時世、こうしたやり取りに抵抗を感じる人も多いはず。
Caoraは、身分証明書(IDカード)の写真データと本人の顔の照合を利用者自身で行えるため、接触機会を減らし感染リスクを抑えるという社会的課題を解決する。操作はいたって簡単だ。マスクをしたままでも顔認証はOK。もちろん事前の顔情報の登録も不要。Caoraだけで顔認証を行うので情報漏洩の不安もない。なにより外見がカワイイ。

本人確認をスムーズに行うインテリジェント端末「Caora」

このCaoraは、厚生労働省が2021年3月に運用を開始する「オンライン資格確認」に対応した端末として採用が決定している。ブースではマイナンバーカードに対応した医療機関・薬局向けのモデルのデモも行われていた。説明員の話では、精度を試したくてわざわざ家からマイナンバーカードを持ってきた人もいたという。
3月以降、近くの病院でCaoraを見かける機会があるかも知れない。
PFUが得意とする画像処理技術が生み出した、このニューノーマル対応製品「Caora」の詳細を、製品ページ注1から是非確認して欲しい。

注1:対面業務を進化させる本人確認エッジソリューションCaora(https://www.pfu.fujitsu.com/caora/

サブスクが、ついに紙書類のデジタル化の現場にも

Caoraの隣のブースでは、PFUが新たに提供するサブスクリプションサービスが展示されていた。
スキャン環境をやさしく・まるごとサポートする「ワンタッチスキャンサービス」である。
現場で日々発生する膨大な数の領収書や請求書。これらの申請処理やそれを受け取って処理する管理部門の効率化を図りたいと考える企業は多い。しかし、環境整備に伴うコストや技術面の不安もあって取り組みへの敷居が高いのも事実である。
こうした困りごとを一気に解決するのが、PFUの「ワンタッチスキャンサービス」だ。
月額料金制のこのサービスを利用すると、稼働に必要なスキャナーの設定、事前の動作確認テスト、配送、そして運用保守まで、すべてPFUがワンストップで対応してくれる。
このサービスの最大の特徴は、短期間で稼働できる点にある。お客様は、必要な情報をWebから登録し、見積り・発注する。スキャナーが手元に届いたら、LANに接続するだけだ。Web申請から業務開始まで最短で1週間というから驚きである。

スキャン環境をサポートする「ワンタッチスキャンサービス」

地域とつながるPFU

PFUブースでは、社会・地域とのつながりを強く感じる展示も見られた。そのいくつかを紹介する。

まちづくりでつながる

最初に紹介するのは、「ScanSnap iX1500」のホワイトモデル。
ホワイトモデルは、PFUのProDeS工場(石川県かほく市)で生産されていることもあって、かほく市のふるさと納税の返礼品に採用されているのである。

ふるさと納税の返礼品に採用されたiX1500ホワイトモデル

創業から60年、今も、かほく市に本社を置くPFUを代表する製品といえばスキャナー。そのスキャナーが、地元のふるさと納税の返礼品に採用されるというのは、なんと素晴らしいことか。
PFUは、SDGsの取り組みのひとつとしてまちづくりを、返礼品という形で側面から応援しているのである。

文化振興でつながる

隣のブースでは、季節を先取りした雰囲気を漂わせる展示が見られた。それは、PFUが毎年開催している「クリスマス・チャリティコンサート」を紹介するパネルだ。
PFUでは、石川県の音楽の振興と発展に寄与することを目的として、1992年からチャリティコンサートを毎年開催している。チャリティ募金は、「金沢市文化の人づくり基金」に寄付され、地元の伝統文化の復興に役立っている。
今年は、コロナ禍の影響もあって開催が危ぶまれたが、これまで長く築きあげてきた貢献活動を何とか継続したいという想いから、オンラインで開催することになった。

オーケストラアンサンブル金沢

ネットワーク越しではあるが、一流のオーケストラが奏でる演奏に触れ、音楽の感動を純粋に味わってほしいとの想いと、コロナ終息の願いを込めて、12月5日、ライブ配信される予定だ注2

注2:創業60周年記念「PFUクリスマス・チャリティ オンラインコンサート」は、12月5日にライブ配信され、現在は視聴を終了しています。

スポーツでつながる ~PFUブルーキャッツ~

10月17日、バレーボールリーグ「2020-21 V1リーグ」が開幕した。
PFUのブルーキャッツは、1980年の創部以来、V・チャレンジリーグでの優勝をはじめ、その勇姿を通じて、多くの観客に感動と勇気を与えてきた。PFUブースでは、昨年のVリーグのハイライトシーンを映像で流すなど、臨場感あふれる演出がなされていた。そのブースを背景に、親子連れが写真を撮っている姿が印象的であった。

ブルーキャッツブース

さて、冒頭で「PFUのブルーキャッツ」という言い方をしたが、オフィシャルサイト注3を見てもわかるとおり、ブルーキャッツは、たくさんの地元のサポーターに支えられ、愛されてきた。それに応えるべく、地元の小中学生を対象にしたバレーボール教室を開催したり、ちびっこを対象としたスポーツフェスタに参加するなどの活動を通して、地域との交流を図ってきた。
ブルーキャッツは“石川のブルーキャッツ”であり、“みんなのブルーキャッツ”でもあるのだ。

注3:PFUブルーキャッツ オフィシャルサイト(https://www.pfu.fujitsu.com/bluecats/

コロナ禍の今だからこそ大切なこと

今年のe-messe kanazawaの企画に関わった織田さん(CSR推進部)に話を伺った。

今年の企画に関わった織田さん

──出展の目的や狙いを教えてください。
織田PFUの得意技術のアピールを通して地元石川での商談を発掘することです。しかし、もう1つ大切な狙いがあります。それは、PFUと地域や社会がしっかりつながっていることを知っていただくことです。そのため、今年は、わかりやすいパネルと動画を多く活用した展示にしました。

──例年と違った開催となりましたが、どのように感じていますか?
織田今年はコロナ感染拡大防止の観点から、事前申し込みや入場時間などの制限があり、来場者数は減っていますが、明確な目的を持って来場されたお客様が多く、熱心に展示やデモをご覧いただけたので、実のあるものになったのではないかと感じています。また、バーチャル展示会を同時開催できたことで、実際に会場に来られなかった人にも、PFUの技術や取り組みをじっくりと見てもらえたので良かったと思います。

今年は、コロナ禍を反映して、「がんばろう石川!」というメッセージがタイトルに冠されていた。先行きが不透明な今だからこそ大切なことはたくさんある。ICTで現場の課題を解決することも、元気をなくした人に、ちょっとだけ希望を与えることもPFUはできるということを今回の展示を通じて感じた。
こうして、多くの来場者の関心を集めた今年のe-messe kanazawaは好評のうちに幕を閉じた(2020/11/20~21)。

「しまった。見逃した!」という方、心配無用だ。今年は「バーチャル展示会」も用意している。主催元である一般社団法人石川県情報システム工業会のホームページ注4から申し込むと、今年いっぱいはフィジカル展示とほぼ同等の内容が閲覧可能である。

注4:一般社団法人石川県情報システム工業会のホームページ(http://www.isa.or.jp/

会場から湧き上がる歓声?!

e-messe kanazawaの会場をひととおり見終えたとき、突然、2階から大きな歓声が聞こえてきた。
歓声の正体は、同時開催の「加能ガニロボットコンテスト注5」である。このコンテストは、石川県の特産品である加能ガニを模した自律走行型ロボットをコースに沿って走らせ、クリアしたミッションで得点を競うというものだ。出場資格は石川県在住の小学4年生~6年生。今年で2回目になる。
昨年の熱戦の様子は、PFUジャーナル注6でも紹介されている。

真剣なまなざしの参加者

実は、PFUでは、ロボットの走行に必要となるプログラミングを学ぶ機会を子供たちに提供し、支援する活動を長年続けている。それは、教育という視点ではなく、プログラミングの楽しさを感じてもらい、ものづくりマインドの醸成を後押しすることだ。PFUはこのような形でも地域とのつながりを大切にしているのだ。

注5:主催は加能ガニロボットコンテスト実行委員会/金沢市、後援は総務省 北陸総合通信局/北國新聞社/北陸放送であり、たくさんの企業や団体の支援・協力によって開催されている。

注6:PFUジャーナル「楽しくなければプログラミングじゃない!」(https://journal.pfu.fujitsu.com/00052/

眺望とグルメを堪能、そしてPFUブルー

取材の当日、せっかくの機会なのでライトアップを見ていこうということになり、日没までの間、2階にあるレストランで食事を楽しんだ。このレストランは、どの席からも海が見える構造になっており、眺望と地元の食材を使った料理を同時に堪能できる。海を見ながら食事をしていると時間が緩やかに流れる気がするから不思議だ。

眺望と料理を堪能できるレストラン
(写真提供:金沢港クルーズターミナル)

食事を終えた頃、タイミングよくライトアップが始まった。

加賀五彩の藍色でライトアップされた金沢港クルーズターミナル
(写真提供:金沢港クルーズターミナル)

LEDライトが5分間隔で5色に切り替わる。「加賀五彩」という加賀友禅の特徴的な5色を表現したものである。なんとも幻想的だ。しかも、その明かりは港湾を囲むように約3キロにわたって照らし出される。圧巻だ。機会があれば、是非、訪れてみてはどうだろうか。

金沢港湾事務所の担当者はこう話す。「残念ながら、今年はまだクルーズ船の寄港が1隻もありません。ですが、ここは、デートスポットや憩いの場になっていて、県民に愛されています。そのことがなによりもうれしい」
当日も多くの家族連れで賑わっていた。すべてがe-messe kanazawaを目的とした来場者ではないが、世代を超えて楽しめるこの場所のように、PFUも、若者からお年寄りまで愛される会社に成長していきたいというメッセージが、今年のe-messe kanazawaでは強く発信されていたように感じた。

ここから見える海と空は世界につながっている。つながっていることすら感じさせないくらい自然に。
PFUと地域のつながりも、60年の歴史の中で時間をかけて自然にゆっくりと培われたものだ。そこにはテクノロジーだけではない何かがある。PFUはこれからもそれを追い求めていく。

金沢港クルーズターミナルを後にする時、辺りはすっかり闇に包まれていた。
ライトアップされた海の色と、月に照らされた空の色は、まるで会社のシンボルカラー(PFUブルー)のようにやさしく輝いていた―。

撮影協力:金沢港クルーズターミナル

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